財産を換えることの意義
「わらしべ長者」の男は、なぜ次々と物を手放したのだろうか。モノは所有しているうちはただのモノに過ぎないが、手放すことで付加価値をつけられるからではないか。
そう考えると、金銭の性質を表した童話として見ることもできるかもしれない。考えてみれば、金銭の機能には「交換手段」もあるのだから、物々交換ではなく資産運用の話として見てもあまり違和感はない。
直接的で短期的なリターンを求めない
ある程度の資産を持っていれば、お金を守る術を手に入れるのも大事だ。しかし、それは1円たりとも損をしないように守ることではなく、悪意を持った人間に奪われないようにするという意味の「守る」である。必要なときには、ケチらずにお金を使わなければならない場面もある。
そして、正しくお金を使えば、不思議と使った分が戻ってくる。
もちろん、金銭として帰ってくるとは限らない。人から情報を得ることかもしれないし、お礼として別のモノをもらうことかもしれない。
わらしべ長者の話を読み返すと、与えたものに対して直接的なリターン(現金化)にはこだわっていなかった。直接的な金額で戻ってくるとは限らないにしても、将来の利益に繋がっているかもしれないと思えば、ケチるのはもったいない。
守銭奴と倹約家は何が違うのか
「守銭奴」というのは、金を守る奴と書く。その名の通り、金銭を貯めることに執着している人のことだ。言葉だけを見れば「倹約家」とさして変わらない。ただし、実際にはニュアンスが異なる。
具体的には、お金の「使い方」に差があるように感じられる。守銭奴は貯めることに執着しており、よもやお金を手放すことで儲けられるという状況があるとは信じていない。預金よりもタンス貯金を選ぶタイプだろう。
だが、タンスの中に金をしまい込むのは、金銭の役割を見る限り得策とは思えない。金銭は単なる紙ないし金属片、つまりモノか数字に過ぎず、手放すことで始めて効力を発揮する代物だからだ。
例えば、預金は消極的に金を手放す方法だ。銀行は預かった金を別の人に貸したり、投資に回したりして、新たな利益を生み出す。そうやって富を増やし、金の提供者に報酬を分ける。それで利息が付く。
もっとも、預金では微々たる効果しかないので、裕福な人は余分な金をほとんど株式や不動産に換える。
それで損をすることも当然ある。しかし、ただ貯め込むだけでは、思いもしない得を引き寄せることはまずできない。自分の納得できる方法で金銭を手放し、価値ある何かに換えるからこそ、その後のリターンが何倍にもなる可能性が出てくるのだ。
世の中で最も金持ちなのは倹約家であり、最も貧乏なのは守銭奴である。
セバスチャン・ロッシュ・シャンフォール