コイントスで重大な選択を決めたらどうなるのか?
とある経済学者が、人生を左右するような決断で迷っている人々に向けて、コイントスで選択を決定するサイトを立ち上げた。表が出たら変化をすべし、裏が出たら現状維持すべしという、占いじみたものである。
このバーチャル・コイントスで道を示すサイトでは、持ち込む問題は何でも良かった。起業するか、仕事を辞めるか、離婚をするか、子どもをもうけるか、といった重大な選択もあったし、ダイエットをするか、タトゥーをいれるべきか、ひげを剃るべきかという些細な問題でも受け入れていた。
これはれっきとした研究となり、査読論文 (※) としてまとめられている。
(※)Heads or Tails: The Impact of a Coin Toss on Major Life Decisions and Subsequent Happiness
変化を選ぶ方が幸福度は高い
コイントスで人生の選択をした人々に対しては、2ヶ月後と半年後それぞれに連絡を取り、選択について後悔しているかどうかを聞いている。
それによると、仕事を辞める・関係を断つなどの重大な選択を持ち込み、コイントスで変化するべしと指示されてその通りにした人は、変化を選んだことに満足していたのだ。
しかも、コイントスによって変化を起こした人は、コイントスで現状維持を選んだ人よりも幸福度が高いという結果も得られた。
ただし、ささいな選択をコイントスによって決めた人はその限りではなく、幸福度は現状維持でも変化でも変わらなかった。幸せの度合いが高かったのは、人生を左右するような大きな決断で、変化を選んだ人だけだ。
このことから、論文では「人生を変えるような重大な選択に直面した際には、人は現状維持をしたがる。そして、変化を恐れすぎる傾向にある。」ことを指摘している。
自分の夢を追うなら変化するしかない
「現状維持よりも変化したほうが幸福度が高い」という研究はこれだけではない。実際、人は「やらなかったことを公開する気持ちの方が、やったことを後悔する気持ちよりも強い」ということは、よくいわれる。ツァイガルニク効果(達成できなかったこと、中断してしまったことが強く記憶に残る)もあるので、なおさらなのだろう。
現状維持とは、自分が追い求めているものを捨てて、これまでの惰性や他人からの期待を優先してしまうことだ。そうではなくて、自分にとって重要なことを続けていく方がよく、そのためには変化するしか道がない。
このブログの主題である「わらしべ長者」にも触れておくと、男は布や馬を手に入れた時点で満足し、現状維持しても良かったのに、リスクを取ってでも前に進もうとした結果、長者と呼ばれるようになった。
何事もわらしべ長者のようにうまくいくとは限らないが、挑戦しないよりはするほうが、後悔はずっと少なくなるはずだ。
何を捨てるかで誇りが問われ、何を守るかで愛情が問われる。
スティーブ・ジョブズ