人生に焦っていた

自分は大学卒業後、新卒で人材派遣会社に就職した。しかし、5年ほど経っても年収は350万くらい。キャリアアップを目指していくつか資格を取ってみたものの、資格の使い道が分からなかった。

貯金もしていたが、思ったように貯まらない。このままなんとなく人生を終えてしまうんだと嘆いていた矢先に出会ったのが、今のメンター(師匠)だ。

怪しいとは思った。それよりも、今の現状にどうにか突破口が欲しかったので、おそるおそる話を受け入れることにしたのだった。もし高級な壺を買わされそうになったり、自分に売上の何%を納めろという話が出たりしたら、その段階ですっぱり縁を切るつもりで。

だがそういったことは杞憂に終わった。とても運がよかったと思う。そして、メンターは「わらしべ長者」を例に出してキャリアの築き方を教えてくれた。それも、最初から快く受け入れたわけでは無かったのだが。

手持ちのものを価値あるものへと変える

「わらしべ長者」の童話は、子どもの頃に1度は読んだことがあるだろう。貧しい男がお堂で観音さまに祈ると、「お堂を出てすぐに手にしたものを大切にして、西に向かいなさい」という啓示を得る。男がお堂を出てから手にしたのは一本のわらだったので、男はそれを持って西へ向かった。わらがみかんに、みかんが反物に、反物が馬に代わり、最終的には誰もが知る大長者までのし上がったという話だ。

自分には右往左往するうちに取っていた金融系の資格や経験があった。でも、例えば日商簿記なんて会計の世界なら持ってて当たり前だし、日商簿記1級ですら、税理士試験の受験資格を得るための前提条件だから取るだけで、仕事に活かすためではないのだ。FPも活用の仕方がいまいち分からない。プログラミングも趣味程度でかじっていたが、座学しか経験していない人間などお呼びではない。価値がないとまではいわないが、これだけでは自分のキャリアを築き上げるのは難しい状態だった。

メンターは、そういうスキルをいかに売り込むのか、どのように自分が習得したいスキルを学べる環境を引き寄せて成果を大きくしていくのかという、かなり現実的な方法を提示してくれたのだった。

わらよりも価値ある資産を活かそう

わらのように無価値なものをわざわざ探さなくても、一番価値のあるのは自分の時間だ。

わらしべ長者でも同じことだ。物々交換したからうまくいったわけではなくて、必要なところへわらを運ぶ役割を”自分”に担わせたからこそ、うまくいったのだと思うようになった。

自分の場合は、すでに持っているスキルや成果を持って、ほしいと言ってくれる会社へ行く。自分のスキルを提供しながら、成果を出す機会をつかむ。その成果が、次の仕事に繋がる。そういうことを繰り返して収入を増やしていった。

そのおかげで、現在の年収は800万円ほどになった。正直、めちゃくちゃ高いというわけではない。夢がある金額でもない。ひょっとすると、もっと増やせるかもしれないが、お金に関しては現状で満足している。

結局のところ、相手からどう奪ってやろうかと考えるだけではうまくいかない。自分が与えられるものを正しく見極めることが、成功するうえで重要なのだなと今ではしみじみと思う。

人は得るものによって生きるが、与えるものによって人生を作る。

ウィンストン・チャーチル